視覚復号型秘密分散法
Visual Secret Sharing Scheme (Visual Cryptography)


暗号っていうのはどうも難しい響きがあります.そこが良いって言う人もいます が,暗号文を手にして,分厚いコードブックや難しいプログラム…というイメー ジをおもちの方も多いかとお思います.しかし,そんな物が必要ない暗号だって 勿論存在します.このページで御紹介する視覚復号型秘密分散法 (Visual Secret Sharing Schem, 以下,VSSSと略)はまさにそんな簡単な暗号システムで す.

1.秘密分散法のおさらい

このページでは秘密分散法 (Secret Sharing Scheme) の1つである,視覚復号 型秘密分散法(Visual Secret Sharing Scheme, VSSS, Visual Cryptography, 視 覚暗号とも言います) について説明します.秘密分散法のページを御覧でない方のためにまず, 秘密分散法について簡単に説明をしましょう.秘密分散法とは,

というものでした.正確には (K , N ) しきい値法と言います.どうしてこんなシステムが必要なのかは

なので,盗難や破損,紛失などに強く,大事な情報 を保存するのに適している,ということでした.しかし, などという疑問も生じます.そこで「視覚復号型秘 密分散法」が登場するわけです.

2.視覚復号型秘密分散法

一時流行った立体視を覚えていらっしゃるでしょうか?…そう,この方式は あれに少し似ています.始めに次のような砂嵐画像を用意します.例えば,

画像をクリックすると大きな絵が出ます.

もちろん,これを立体視したって何も見えません(本当に上手な人がやったらど うなるか分かりませんが…). しかし,これを OHP用紙(透明のシート)に印刷してきれいに重ねてみて下さ い.驚くなかれ,次のような絵が現れます.

これは ( 2 , 2 ) しきい値法を実現していることがお分かり だと思います.つまり,

のです.これなら 計算機がなくても瞬時に秘密を取り出せます .さあ,どうやってこのようなものを作ればいいのでしょう?

3.どうやって作るの?

ここでは簡単に白黒2値画像を秘密画像とするような,( 2 , 2 ) しきい値法の構成 法をご説明します.

まず,下の図を御覧下さい.

これがないと分かりません

2枚の秘密画像(左)は,全体では砂嵐のようですが,実は黒く復号される部分 と白く復号される部分で画素の割り当てが異なっています(図の「符号化」の部 分).

白く復号される部分を拡大すると 赤い 部分のように,黒く復号される部分を拡大すると 青い 部分のようになっているのです.重ねると白黒がはっきりしますが,重ねる前は 「白半分,黒半分」となっており,全体では砂嵐のように見えるのです.このた め,分散画像を1枚しか持たない人は「秘密画像の情報が全く分からない」こと になります.

この方法はカラー画像や,白黒濃淡画像(写真)まで拡張されています.詳しく は以下にあげるサンプルを御覧下さい.

4.実際の構成例

さて,白黒2値画像に関してVSSSの構成法をご説明しましたが,もちろん,カラー 画像や白黒写真だって隠すことができます.

そこで,最後に視覚復号型秘密分散法のサンプル画像を紹介します.3隅に書か れた四角が合うようにシートを重ねてみて下さい.あえて,何が出て来るかはこ こには書きません.

ちょっと重いのもあるかも知れませんが,御容赦下さい.まず,普通の(?) VSSSから.

ここで,「秘密画像って1つと決まっているの?」と思われる方は,こちらを御 覧下さい. ほかにも,「砂嵐画像ではどれをもらったか忘れそう」と言う方は,こういうの はいかがでしょう?それぞれの秘密画像に文字を書いてあります.謎なぞになっ ていますから,重ね合わせる前に秘密画像を想像してみて下さい. この他に「こんなのできませんか?」というものがあれば,御連絡下さい.

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